2015年9月27日日曜日

VWのクリーンディーゼルの不正はどうして判ったのか

 今回のVWで行われた不正は、普通の測定では判らない物です。

 2013年にディーゼルエンジンによる大気汚染を心配した欧州当局が、米国で販売された欧州車の路上走行での排ガス検査を望み、ワシントンとベルリン、サンフランシスコにオフィスを持つ非営利団体の国際クリーン交通委員会(ICCT)が欧州当局から排ガス検査の実施を委託されました。

 ICCTは13年の早い時期にウェストバージニア大学の代替燃料・エンジン・排ガスセンターで研究者らを起用して、1989年から、エンジン排ガスと代替燃料の使用について研究している同センターが、VWのパサートとジェッタ、BMWのX5の3車種のディーゼル乗用車を検査することになりました。

 パサートとジェッタに加えBMWのX5を使って2013年3-5月にかけて試験したところ、VW車は試験場では排ガス規制の法的基準を満たすのに、路上では基準よりはるかに多くの窒素酸化物を排出することが分かりました。
 センターは14年5月に研究結果を公表し、カリフォルニア州の大気資源委員会が調査を開始したそうです。

その時の論文がネットにありましたので、読んでみました。
英語の論文で133Pもあります。
Prepared by:Principal Investigator Dr. Gregory J. Thompson (Principal Investigator)
著作はウエストバージニア大学の主任研究員、グレゴリー・J・トンプソン博士。
http://www.theicct.org/sites/default/files/publications/WVU_LDDV_in-use_ICCT_Report_Final_may2014.pdf

 論文の中には車のメーカーと車名は載っていませんが、海外のニュースから拾えば出てきます。

EPA's notice of violation of the Clean Air Act to Volkswagen [press statement]
http://theicct.org/news/epas-notice-violation-clean-air-act-volkswagen-press-statement

A: VW ジェッタ 排ガス浄化装置LNT(NOx吸蔵還元型触媒)
B: VW パサート 排ガス浄化装置SCR(尿素SCRシステム)
C: BMW X5 排ガス浄化装置SCR(尿素SCRシステム)
と、なっています。


 測定中の車で、論文の中の写真です。
実走行の為に、結構な機材を積んでいます。
車載型排ガス計測システム は日本の堀場製作所 OBS-2200
 赤い装置は、機器を動かすための発電機ですね。

 実際に公道を走りながらNOxやPM(PM2.5のような微粒子)を測定するのはかなり難しいそうで、渋滞時とスムーズな流れでは異なる動作が予測されるため、様々な条件下で各100回ものサンプルを取ったようです。

 NOxトラップ(LNT)(車両A)と2つの尿素ベースの選択的触媒還元(SCR)システムで検証。


COの排出量
 COの発生量は3車とも、優秀です。
間違い訂正 CO2はCOでした。 


FTP-75と規定されている試験方法と他の測定比較
 FTP-75と規定されている試験方法では、エンジンの暖機運転なしでの負荷パターン、暖気するまでの慣らし運転のパターン、そして暖気運転後の負荷パターンでテストします。
 問題となったのは急発進や急加速、高速運転、急停止などを想定していないFTP-75の計測上の欠点を改良したUS06と言う実際の走行のような試験方法です。
 この方法で試験をした際に、NOxの排出値が規定値を大きくオーバーしています。
 ヨーロッパの排出規制であるNEDC(New European Driving Cycle)でも問題のVW車はUS06程ではないにせよ数値が悪くなる傾向にあり、計測方法によってばらつきが大きすぎることが問題視されたのではないかと思われます。

 しかし、FTP-75で試験したデータは見事な数字・・・・
 凄いプログラムとしか言いようがありません。

 各車両の比較データ

 実際に走行した時のデータを100回測って、その平均した物です。
 赤いラインはばらつき(測定データの範囲)です。
 
A: VW ジェッタ 排ガス浄化装置LNT(NOx吸蔵還元型触媒)
 もう全然ダメとしか言いようがありません。
 特に山登りがある高負荷では40倍以上と凄い排ガス。
 これって、プログラム直しても、規格に入るのか疑問です?

B: VW パサート 排ガス浄化装置SCR(尿素SCRシステム)
 尿素SCRシステムを使った物でも、VWのシステムはインチキではないかと思われます。
 VW ジェッタほどではないにしろ、実走行では規格オーバーを連発しています。
 FTP-75の時は、いっぱい尿素噴射しているが、実走行になるとケチっている?プログラム直すとすぐに尿素タンクが空になるのか・・・
 しかし、プログラムで何とかなる車でしょうか?

C: BMW X5 排ガス浄化装置SCR(尿素SCRシステム)
 BMWのX5は田舎の山道での高負荷以外は基準以内。
 最近の記事で、BMW X3で基準値オーバーと言う報道もありますが、どんな車でも高負荷時はNOxを多く発生すると思います。
 この車は問題なさそうです。

A: VW ジェッタ 排ガス浄化装置LNTですが、もう少し詳しいグラフがあるので見てみますと。

 縦軸測定頻度・横軸NOxのデータ

 何度も測定していくと、悪いデータがどんどん増えるグラフ。
 実走行でもプログラムが働いて、動作がその都度変わっている。
 
B: VW パサート 排ガス浄化装置SCR(尿素SCRシステム)

 こちらも、動きが変なので、VWの排ガス浄化装置SCR搭載車でも不正プログラムが入っているかもしれません。


C: BMW X5 排ガス浄化装置SCR(尿素SCRシステム)


 BMWは山登りの高負荷以外は問題なさそうです。


A: VW ジェッタ 排ガス浄化装置LNTの山道で、走行距離を横軸に取ったグラフです。
 縦軸はNOx・PN・排気温度の物。



 約20Kmほど走って、上り坂と思われる所で、排ガス温度の上昇とともにNOxが大量に発生しています。
 また、その時点での大量のPMを出しています。

 このデータをもとに、VWに迫った結果、不正プログラムの存在を吐いたのでしょうね。
 しかし、報道ではA: VW ジェッタ 排ガス浄化装置LNT(NOx吸蔵還元型触媒)だけの問題のようになっていますが、B: VW パサート 排ガス浄化装置SCR(尿素SCRシステム)もデータを見る限り不正プログラムが入っているように見えます。
 その辺の真相はまだまだかかりそうですね。

 昨日の日経夕刊に書いてあったプログラムの動作条件は、一定時間ハンドル操作をしないと排ガス浄化モードに入るそうです。
 シャーシダイナモではハンドル触りませんので、そうかと。
 しかし、燃費は悪化しますので、その点不利ですが、VWのディーゼル車は実走行とモードテストの乖離が少ないと言うのは、納得できたりします。

 アメリカのNOxは厳しすぎるとは思いますが、最近の欧州の大都市で光化学スモッグの発生は増えているので、あながち間違いではないかもしれません。
 欧州は、CO2詐欺の親玉ですので、NOxなんかよりCO2少なくが信条・・・ですかね?
 中国北京の光化学スモッグも、VWが増えたせい?(笑)

 ここまでして車を売っても、ばれた時の反動が大きすぎます。
 本当にばれないと思っていたのでしょうか?
 しばらくは、VWのディーゼル乗っていると、問題のない車でも偽エコカーと後ろ指さされそうです。
 失った信頼は物凄く大きく、簡単に取り戻せません。


MC太陽熱温水器
http://item.rakuten.co.jp/mmcsolar/c/0000000110/ 
 入水温度   20℃
 温水器     49℃ 温度差29℃

 太陽光発電
 発電量2.1KW ピーク0.86KW

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